« 本の旅 バッグをザックに持ち替えて 08稜線に惹かれて(南八ヶ岳) | トップページ | 丹沢登山紀 5月 みどりの日 »

2019年5月 9日 (木)

本の旅 バッグをザックに持ち替えて 09谷口けいさん

著者が、若くして山で散った女性登山家の「谷口けいさん」と親交があったとは驚きでしたが、著者が作家であることを考えれば交流範囲が広いのでどこかで接点ができるのはありうることでもあります。

Photo_180

女性登山家の「谷口けいさん」には早くから注目していました。2001年にデナリ(マッキンリー:6193m)に登頂しています。デナリは植村直己が43歳のとき消息を絶った山であり、 けいさん はそれから14年後の冬に北海道・大雪山系黒岳で命を落とすのですが、奇しくも けいさん も享年は43歳でした。あまりにも若すぎる死でした。

028163m

“けいさん は2002年より野口健エベレスト清掃隊、マナスル清掃隊に参加していて、2006年にはマナスルに登頂しています。

Photo_170

“けいさん は、2007年5月に、野口健さん率いるチョモランマ清掃隊に同行してエベレストに登頂しています。エベレストに登頂した女性登山家は第一号の田部井さん以来10人目でした。(20185月現在、エベレストに登頂した日本人は243人で、そのうち女性は25人で、その数の多さにびっくりします) 

04keisann

2008年ヒマラヤ(インド)のカメット(7756m)未踏の南東壁の絶壁を登る “けいさん 。 

041_1

アルパインクライマー平出和也氏とともに、カメット未踏ルート南東壁に初登撃しました。

Photo_169

カメット未踏ルート南東壁初登撃によって、登山会のアカデミー賞といわれる「ピオレ・ドール(金のピッケル)賞」を日本人として、女性として初めてノミネート・受賞した。まさしく世界から注目を浴びる登山家のひとりでした。

Imagesj5z3vgdo

著者と けいさん とは、著者が山に登るきっかけとなった『一瞬でいい』という小説の解説を引き受けてもらったことが縁で交流が始まったとのこと。 

07_23

「会ったとたん、なんて気持ちのいい人だろうと思った。日に焼けた笑顔が眩しい。全身から森と風と雪の匂いが立ち昇ってくるようだ。そこにいるだけで周りを明るくする。その爽やかな佇まいと、穏やかでどこかはにかむような話しぶりにたちまち魅了された。」 

Photo_171

2015年・冬。谷口さんは北海道・大雪山系黒岳で滑落し、亡くなった。享年43歳。あまりに突然の計報で言葉もありませんでした。一緒にエベレストに登頂した登山家野口健氏は「谷口けいさんを偲ぶ会」で、次のように語っています。  

「あれから約3カ月。今だに現実を受け止められないでいる。リアリティがないのだ。僕がカトマンズに到着したその日にけいさんは遭難。遭難の知らせを受けたのはカトマンズの夜。「まさかけいさんが」という思いと「ついに来るべか時が来てしまった」との感情が絡み合った。」(画像はチョモランマ清掃隊で)

Photo_172

野口健氏はさらに続けて(画像はアラスカの氷河、氷と岩のミックスラインを登る けいさん 。

「先鋭的な山登りを続けていれば時間の問題でいつかは死ぬ。一部の例外を除けば。けいちゃんのよりハードな登山スタイルにこんな日が訪れてしまうのではと怯えていた部分もあった。我々、山屋は「自分は山では死なない」と感じつつも、仲間を山で失う度に、次は自分の番かもしれないと密かに感じてしまうものです。そして心の奥底で覚悟を決める。」 

Photo_168

 けいさん がエベレストに登頂したときブログに記した手記があります。そこには「初めてのチョモランマ(エベレスト・チベット側)そして、きっと二度と来ないはず」との書き出しでした。高所の薄い酸素の中で平常心を失っていた別の隊のイタリア人に酸素を吸わせ、命綱を付けずに下山していたオーストリア人女性に「死にたくなかったらカラビナ(登山用金具)ちゃんとロープに掛けなさい」と厳しく注意するなど多くの登山者の面倒をみた様子がつづられていました。  

野口氏が言うように「先鋭的な山登りを続けていれば時間の問題でいつかは死ぬ。」とは思いますし、登山家や冒険家は命を失うまで挑戦する人と思っているのですが、残念なのは けいさん は先鋭的な登山で亡くなったわけではなく、厳冬期の北海道とはいえ、ちょっとしたことで亡くなったことが悔しくもあります。ご冥福をお祈りします。

|

« 本の旅 バッグをザックに持ち替えて 08稜線に惹かれて(南八ヶ岳) | トップページ | 丹沢登山紀 5月 みどりの日 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 本の旅 バッグをザックに持ち替えて 08稜線に惹かれて(南八ヶ岳) | トップページ | 丹沢登山紀 5月 みどりの日 »