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2019年5月20日 (月)

本の旅 バッグをザックに持ち替えて 10富士山は、登る山か眺める山か(後半)

著者たち一行7人は無事に八合目(標高3100m)の山小屋に到着しました。富士登山の正念場はここからです。著者の富士山登頂記は、今まで登ったことのない人には参考になることが多いと思いますので、前回同様できるだけ原文を掲載します。(画像は私の富士山登山記から転載しました) 

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「山小屋の広間に行くと、小屋の人が言った。『頂上近くの登山道は、ご来光目当ての登山客ですごい渋滞を起こしている』 気温は五℃。頂上付近はもっと低い。立ち止まったまま待っているのは寒さが身に染みる。それに、どうせ頂上は満月でご来光は見られない。ということで出発は午前三時に変更となった。」  

(画像は頂上直下での渋滞) 一度だけ山頂でご来光を仰ぎましたが、すごい渋滞と山頂で日の出を待つ間の寒さでもうこりごりとなり、以来ご来光は時間をずらして登山途中で仰ぐことにしました。 

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「登山道は東に向いているので、ご来光はどこででも眺められるという。せっかくなら頂上で迎えたかったが、それも仕方ない。寝不足はあるものの、体調はいい。朝食も頑張って全部食べたし、シャリバテ(血糖値の低下)の心配もない。これなら行ける。やる気まんまんで、午前3時、防寒用ウェアを着込み、毛糸の帽子を被り、ヘッドランプを点灯して、山小屋を出発した。」  

am02:30起床、03:00出発の第一陣、山頂でご来光を見たいという人たち(宿泊客の9割くらい)が出発した後の山小屋は嘘のように静かです。

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「ところが30分ほど登った頃から、どういうわけか、だんだん気分が悪くなってきた。朝食が胃にもたれてムカムカする。しばらく我慢したが、だんだん気分が悪くなって来た。本八合目(3370メートル)まで来て、とうとう足が止まった。駄目だ、吐きそう…‥・。私は言った。『これ以上、登れそうにないので登頂は諦める。私のことは気にしないで、みんな登って来て。帰りは下山道に合流するところで待ってるから』」  

最も辛く思うのは本八合目です。 “本八合目 胸突き八丁” という看板があり、毎回ここから上を見上げると胸がつぶれるほどの圧迫感を感じました。霧で見えない上の方は、霧が晴れてくるとまるでのしかかってくるようで、思わず怯んでしまいます。

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「結局『とにかく、いったん休もう』ということになり、メンバーたちには申し訳なかったが休憩タイムとなった。私のこの気分の悪さは、やはり高山病の症状のひとつだったようである。どこかで舐めていたのかもしれない。やはり寝不足があったのだろうか。朝食を一気に食べて胃に負担がかかってしまったのだろうか。今更ながらだけれど、反省点がいくつも浮かんだ。」

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「ぐったりしながらベンチに座っていると、徐々に東の空が明るくなって来た。」

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「群青色の空が少しずつ朱に染まり、空全体が紅く燃え上がってゆく。やがて太陽が海から顔を覗かせた。ご来光だ。光が一直線に伸びて来て、顔を照らしてゆく。ああ、なんて椅麗なんだろう。うっとり眺め入っていると、山小屋の人が出て来て言った。『今シーズン最高のご来光だ』 バテバテの私の気持ちを盛り上げようとしてくれたのかもしれない。頂上には登れなかったけれど、ここでこんなに素晴らしいご来光を見られたのだから、本八合まで来た甲斐があったではないか。私は十分に満足していた。」

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「ご来光を見物後、メンバーたちはザックを背負った。すっかり戦意を喪失していた私は、もちろん彼らをここで見送るつもりだった。それなのに、リーダーは『さあ、行くぞ』と私を促す。もちろん、私は首を振った。 『とても登れない、合流地点で待ってる』 『大丈夫。太陽の光を浴びているうちに元気になる。必ず頂上まで登れる』と言うのである。太陽の光を浴びたら元気になる? まさか。 『行くぞ』」

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「一時間かけて九合目へ。頂上まであと少し。傾斜がきつくて息が切れる。足場が悪くて足の筋肉がばんばんに張っている。もうすぐ、とわかっているけれど、それが実に長い。ようやく鳥居が見えてきた。」 

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「頂上はそれをくぐった先にある。そして、とうとう山頂に到着。 『やった……』と、私は気の抜けた声を出すのが精一杯だった。」 

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「幸運にも頂上は快晴で、素晴らしい景色を眺めることができた。駿河湾、伊豆半島、樹海が広がり、河口湖や山中湖もはっきり見えた。目を凝らせば、道路に車が走っているのも見てとれた。メンバーたちと写真を撮り合ったり、おでんを食べたり、お土産を買ったりしているうちに、すっかり体力も回復していた。探さ200メートルある火口を覗きにも行った。いつかは、火口を一周するお鉢巡りもしてみたい。」 

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著者たち一行がパスした お鉢巡り は富士山の火口(俗にお鉢といいます)を一周するコースで、苦しい思いをした後さらに日本一高場所を時間半~2時間歩くことになりますので体力的にも厳しく、また風が強いと吹き飛ばされますのでなかなか難しいコースです。 

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お鉢巡りは時計回りと反時計回りどちらでもいいのですが、私は両方とも計3回経験しました。2012年のこの時は天気は快晴、無風状態で絶好のお鉢巡り日和でした。時計回りに回り、最高地点剣が峰を通過した後、眼下には伊豆半島が一望でき天空の散歩道を楽しみました。 

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「頂上には一時間ほど滞在し、下山となった。下山道は、登山道とは別ルートになっている。段差が少なく、道幅は広く、岩場もなく、砂利が敷いてある。前へ前へと、単調に足を進めればいいのだから、登りの辛さに較べたら楽勝と思っていた。ところが、それはとんでもない誤解だった。下り始めて30分ほどすると、膝がガタガクになった。」 

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「登りで疲れていたせいもあるだろうが、上半身と下半身の動きが合わず、しばしば腰砕け状態で転んでしまう。また、あまりに長く下りが続くので、靴の先に爪が当たって痛くてたまらない。」  

下れども下れども、うっかりすると滑りやすい砂礫の道を下るのは苦行のようなものです。

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「登りも確かに辛かった。心肺機能が限界を越え、高山病らしき症状も出た。けれども下りはそれとは莫逆の辛さだった。筋肉と関節が悲鳴を上げ、頭がぼんやりしてほとんど思考が巡らない。これが3時間以上続く。五合日登山口に辿り着いた時、どんなにホッとしただろう。すでに足は自分のものではないような感覚だった。お疲れさまでした。掠れる声で、メンバーたちと握手を交わす。登山靴を脱いだら、案の定、両足の親指の爪は内出血で真っ黒になっていた。」  

五合目に着いてみれば、相変わらずの賑やかさです。

富士山は初めてという人何人かのガイドのまねごとをしたことがあります。全員登頂したのですが、下山でダウンした人も何人かいました。ヘロヘロになって動けなくなった人、私の自宅に泊めたこともありました。富士山に登頂したという達成感も、長い長い下山にウンザリして、下山がイヤだから富士登山は二度としたくない人も結構います。

 

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