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2019年5月 3日 (金)

本の旅 バッグをザックに持ち替えて 07稜線に惹かれて(北八ヶ岳)

著者が住んでいる軽井沢からは浅間山が近く、また八ヶ岳にもアクセスがよく、山登りをする人にとっては大きなアドバンテージです。  

「長野県と山梨県の県境に位置し、南北30キロ余りにわたっている八ヶ岳連峰は、私の住む軽井沢からもよく眺められる。北には蓼科山 (2531メートル)、天狗岳 (2646メートル) などがあり、南には八ヶ岳最高峰の赤岳(2899) をはじめ、硫黄岳(2760メートル)、横岳(2829メートル)、阿弥陀岳(2805メートル) などが連なっている。」 

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「八ヶ岳で初めて登ったのは北八ヶ岳の蓼科山で、別名・女の神山、または諏訪富士とも呼ばれている。たおやかな稜線は確かに富士山に似ていて、麓は豊かな森に包まれ、尾根は優雅なラインを措いている。蓼科山なら初心者でも登れるし、行程約4時間の日帰りにはもってこいというので、登りに行った。」   

初めての山に登るというのは多少の不安と、どんな景色が見られるか楽しみでもあり行く前の日からワクワクします。 

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登山データは、歩行距離12km、累積標高差875m、難易度は41で中級レベルとなっていますので決して侮れません。  

「登山口は七合目(標高約1900ートル)。頂上までの標高差は600メートル強といったところだ。季節は晩秋で、天気はよかったものの寒い。でも、歩けばすぐ暑くなるのはわかっている。」  

初めての山にマイカーで出かけるときは、無事に着けるか、駐車スペースは空いているかなど不安は尽きません。実際に三つ峠に出かけた時には道に迷いましたし、霧島山ではお巡りさんのパトカーで先導してもらったうえに山頂まで同行してもらったこともありました。 

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旅行に出かけるときには現地情報はあまり仕入れないことにしていますが、登山ではできるだけ詳しく登山道の情報は事前に把握するようにしています。特にどんなアップダウンか、岩場やクサリ場などについての情報は必要です。著者の場合は、頼りになる同行者がいたようで、その同行者に任せてしまうと辛い目に遭うこともあります。  

「登り始めた時は『これなら楽勝』と思った。しかし、やはりそんな簡単にはいかなかった。20分ほど歩いたところで「ええっ」と叫んだ。目の前に思いがけず急斜面が現れたからだ。道標に「馬返し」と記されている。傾斜がきついばかりでなく、岩や石がごろごろしていて、あちこちに倒木もある。いよいよか、と緊張した。毎度のことだけれど苦しい。筋力と心肺機能の足りなさを改めて感じさせられる。弱音を吐きそうになるのをぐっとこらえて、メンバーたちの後ろを付いて行った。」 

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著者一行は、一時間半ほど登って、将軍平と呼ばれる平坦地に出ると山小屋「蓼科山荘」があり休憩タイムとなりほっとしました。 

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「見上げると、森林限界を越えた辺りから、頂上に続く道が延びている。標高差200メートル強の更なる急登だ。」  

目標の山を目にして、これなら大丈夫そうとか大変そうだとか、地形や自分の体調によっていろいろです。標高差200mですとあまり圧迫感はないと思うのですが。 

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「頂上まで登れるかなあ。正直なところ、やや不安になった。そんな思いでコーヒーを飲んでいると、馬返しの方から男性が登って来るのが見えた。足元は地下足袋、背負子に大きな段ボール箱を三つも括りつけている。どうやら山荘に荷物を運ぶ歩荷の方のようだ。「頼もしい」という形容詞がぴったりの姿に、思わず惚れ惚れしてしまった。」

丹沢でも全国的に有名な歩荷さんがいますし、歩荷駅伝競走もあり、どういう体をしているのかまるで鉄人のようです。 

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著者は岩場で苦労しました。標高差はそれ程ではありませんが、やはり中級レベルの山です。  

「将軍平で15分ほど休んで出発。頂上へ向かう道を登り始めたが、想像通りきつい。急勾配の上に、大きな岩を乗り越えなければならない。『三点確保』 との声が掛かった。岩に取り付く時、手足の四つのうち動かしていいのはひとつだけだ。傾いた岩に足を乗せるのが怖い。滑って転げ落ちてしまいそうだ。」 

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著者の夫(リーダー)から叱咤の声が飛ぶのですが、恐怖心の克服には場数と慣れしかありません。それでも信頼する人からのアドバイスはありがたいものです。  

「『岩肌が乾いているから登山靴は滑らない。靴を信用しろ』と、言われるが疑ってしまう。本当に滑らない? 怖いものは怖いのだ。途中に鎖があり、それを頼りに登るのだけれど、鎖自体も結構重い。岩を掴み、鎖を握り、ひたすら登ってゆく。『腕じゃなくて、なるべく足を使え』と言われても、ついしがみついてしまう。すっかり腰が退けているのが自分でもわかる。みっともない姿だけれど仕方ない。」 

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「これで本当に初心者向けなんだろうか。何だか騙されたような気分になりながら、40分ほどかけて登ったところでヒュッテが見えて来た。ようやく山頂に到着である。」  

登山データでみると決して初心者向けではなくて著者は夫に欺されたようですが、何はともあれ登ってしまえば結果オーライです。 

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「頂上に立ったとたん、目の前の風景に驚いた。とにかく広い。野球ができるほど広い。足元はごつごつの岩だらけだけど、まさか頂上にこのような場所が待っているとは思ってもいなかつた。」 

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「その上、遮るものが何もなく、眺望が素晴らしい。私のホームマウンテン浅間山を始め、南八ケ岳連峰、北アルプスなどなど信州の山々を一望することができる。」 

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「こういう風景と出会えると、疲れも吹っ飛んでしまう。そんな時、私は大概、忘れている。これから下りが待っているということを。岩だらけの急斜面は、下りこそ慎重さが必要になる。登りの時は、身体はきつくても、目線が足元に集中するので怖さはあまり感じないが、下りは全風景が目の前に広がるので、身が疎む。ジェットコースターのいちばん高いところから下を見ているような状況を想像していただけたらと思う。高度感に足が震え、へっぴり腰なのは自分でもわかるが、どうしようもない。」  

山岳事故の9割は下山時に起こります。 行きはよいよい、帰りは怖い! です。著者はもうこりごりと思いながらなんとか下山することができました。  

「もう、岩場の登山はやめよう」と、情けないくらい後ろ向きな気持ちで必死に下り続けた。一時間かけてようやく下山終了。しかし、これまた不思議なことに、無事に下りられると『私にだってやれるじゃない』と、妙な自信がついていた。きっと、こうやって人は山にはまってゆくのだろう。」 

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